マスケット銃の画像

 先込め式の歩兵銃のことである。正確にはマスケットであり、この語だけで銃であることも意味しているが、この語が一般的でない日本では「銃」を付して呼ばれることが多い。

 初期のマスケット銃は射程が短く、連射性能が致命的に低かったため、長射程と高い連射能力を持つ弓矢に取って代わるものではなく、戦場では両者が混在し続けた。また、長い装填中に襲われる危険性が高かったため、戦争での運用に際しては槍兵の護衛を必要とした。

 後にさまざまな改良がなされ、量産が可能となると、運用に熟練を要する弓の方が敬遠され始める。また銃剣の登場によって槍兵の護衛が不要になると、金さえあれば簡単に大量動員可能な銃兵の方が一般化し、一方で弓兵は戦場から消えていった。


【銃器の構造と進化過程】
 初期のマスケットは点火機構がマッチロック式(火縄式)だった。日本では火縄銃がマスケットに含まれないかのような説明がなされることがあるが、上述の通り、これは間違いである。

 続いてホイールロック式のマスケットが作られたが、高価な割りに信頼性が低く、この方式はあまり広まらなかった。しかし、17世紀後半にフリントロック式の点火機構が発明されると、コスト低下や信頼性向上などの理由でこれが主流となった。さらに紙薬莢の発明で銃の射撃間隔は短くなり、フランスで銃剣が発明されて槍の機能も兼ねるようになり、射撃時以外の防御力の高まったマスケットは軍隊の中心となった。

 その後、19世紀中期には点火方式がより簡便確実なパーカッションロックとなった。滑腔式の銃身で球形の弾を発射するマスケットの命中精度は非常に悪かったため、これを改善するためにライフリングを施したライフルド・マスケットの開発や弾の改良などが行われたが、19世紀後半に元込め式の銃が一般化すると表舞台から消えていった。

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