弓の画像

 しなやかな竹や木に弦をかけ、その弾力を利用して矢を飛ばす武器。オーストラリア、タスマニア原住民を除いて広く世界に分布し、その起源は中石器時代に遡る。

 構造による分類としては、1本の木や竹で作った丸木弓と、木と竹または動物の腱などを張り合わせた複合弓に大別される。素朴な丸木弓は、主としてヨーロッパ各地やアフリカ、アメリカ大陸全般に見られる。丸木弓よりはるかに強力な、弓幹をシラカンバの皮や漆で固めた良質な複合弓は、エジプトから始まり、中東アジアから東アジア遊牧民に多く見られた。

 弓幹の長さによる分類としては、長弓と短弓(ロングボウ、ショートボウ)に分けられるが、一般に西アジア遊牧民は短弓、東アジアは長弓が多い。


【コンポジットボウ】
 アジアでは、弓は主に遊牧民族の武器であった。彼らの使用した複合弓は、コンパクトでありながら威力と連射を両立しており、イギリスや日本で使用された長弓よりも遥かに優秀であった。また遊牧民族は、狩猟を生活行為として一般的に行うため、弓の扱いに習熟した者が多く、農耕民族系の国家が苦心した優秀な射手の確保が比較的容易であった。

 モンゴルをはじめとする遊牧民の軍隊の主力は、こうした複合弓を装備した軽騎兵で、騎馬の威力もあって中世におけるユーラシア大陸最強の軍事力を形成した。遊牧民の脅威を継続的に受け続けた中国でも、遊牧民と同じ複合弓を使用したものの、農耕民族である彼らは優秀な射手の確保が難しく、取り扱いが簡単で長期間の鍛錬を必要としない弩をもって、遊牧民族の騎兵に対抗する場合が多かった。

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