槍の画像

 刺突を主目的とする武器。バランスの取れたものは、投擲にも使用できる。有史以前から人類が使用し続け、銃剣に代替されるまで長く戦場で使われ続けた。

 旧石器時代には既に人類は槍を使用していたことがわかっている。鋭い牙や爪による近接戦闘力を持つ猛獣や、突進してくる大型動物に対抗するために、槍の持つリーチは非常に有効であり、この利点はそのまま対人の兵器としても活用できた。
 欠点としては、大型の武器の為、閉所での戦闘には向かない事である。そのため近接戦闘用の短剣なども常備するのが一般的である。

 時代が進むと、近接戦闘そのものが補助的なものに変化し、専門の槍兵がいなくなる一方、銃の先端部に「銃剣」と呼ばれるブレードを装着するようになる。しかし見た目こそ違うものの、運用は槍そのものであり、槍を扱う技術は現在でもしぶとく生き残っている。


【ピルム】
 古代ローマ時代に運用された槍の一種。木製の柄の先端に鉄製の刃をつけたもので、全長はおよそ150センチメートルから200センチメートル、重量はおよそ2キログラムから4キログラムである。時代が進むにつれて、穂は細く軽量化されていった。

 近年の復元実験によれば、ピルムの最大射程距離は約30メートル。ただし、有効射程距離(実際に兵器として威力を発揮する射程)は20メートル以内だという。また、ピルムの形状は、装甲貫通能力を高められるように設計されていることがわかった。穂先の形状が三角形なのは、敵が持つ盾を貫通しやすくするためであり、穂が長細くされていたのは貫通後に目標まで到達させるためだった。重たい木製の柄は、貫通力を増すためのウェイトである。

 時代が進むにつれて、ピルムの穂は曲がりやすくなるように改良されていった。盾を貫通した後に曲がれば、敵はピルムの突き立った盾を放棄せざるをえなくなるからである。盾を失わせれば、ローマ兵は白兵戦を有利に進めることが出来た。また、たとえ地面に落ちたとしても、曲がったピルムは敵によって再利用される心配がなかった。

 帝政ローマ兵は、通常二本のピルムを携行し、うち一本は射程距離を伸ばすための軽いものだった。戦闘時、ローマ兵は敵前まで接近すると、まず軽いピルムを投擲し、次に重いピルムを投擲した。これによって敵の隊列を乱し、盾を失わせた後、グラディウス(短剣)を抜いて白兵戦に突入した。二本を投擲する時間がない場合は、ピルムで白兵戦を行うこともあったという。このため、混戦時に手元を傷つけないように、柄の部分に小さなナックルガードを付けたピルムも存在した。

inserted by FC2 system